監修:司法書士なみき法務事務所
奨学金返済の悩みは一人で抱えないで!|確認すべきポイント
「毎月の奨学金返済が苦しい…」
「延滞してしまって、このままだと保証人に迷惑をかけてしまうのでは…」
奨学金は、返済が困難になると大きな重荷となります。特に、奨学金は保証人への影響が一般の借金とは異なるため、対応を誤ると家族や親戚に迷惑をかけることになりかねません。
この記事では、奨学金返済で困窮した場合に任意整理が有効なのか、そして保証人を守るために知っておくべき適切な対応手順を解説します。
1.奨学金は「任意整理の対象になるか?」その特殊性
結論から言うと、奨学金(特に日本学生支援機構・JASSO)も法任意整理の対象にはできます。
ただし、奨学金返済で任意整理を検討する際は、その特殊性を理解しておく必要があります。
1-1. 任意整理で「元金」は減らない
任意整理の主な効果は「将来利息のカット」や「月額や返済期間の延長」です。
しかし、奨学金は元々利息が低かったり、無利息のケースが多く、任意整理による減額効果はほとんど期待できません。
1-2. 任意整理の最大の懸念点:「保証人」への影響
奨学金返済で最も重要なポイントは、保証人の存在です。
あなたが奨学金を任意整理の対象にすると、債権者(JASSOなど)はあなたへの請求を止めますが、同時に連帯保証人に全額の一括請求を移行します。
• 家族・親戚が保証人になっている場合、任意整理は保証人に迷惑をかける行為となるため、慎重に判断する必要があります。
※ただし、実際は家族は保証人になっておらず、保証会社が保証人になっている場合も多いです。
2.任意整理の前に検討すべき奨学金独自の「救済制度」
奨学金返済で苦しい場合、まず日本学生支援機構(JASSO)が用意する独自の救済制度の利用を検討すべきです。
• 返還期限猶予制度: 経済困難などで返還が困難な場合に、一定期間(最大10年)返済を待ってもらえる制度です。延滞する前に申請することが重要です。
• 減額返還制度: 月々の返還額を1/2、1/3、1/4、2/3に減額し、その分返還期間を延長する制度(最長15年)です。無理なく返済を続けるために有効です。
• 死亡・障害による免除: 本人が死亡したり、精神・身体の障害で労働能力を失った場合に返還が免除される制度です。
【重要】 これらの制度を最大限活用してもなお返済が困難な場合に、初めて「債務整理」を検討します。
3.保証人への影響を最小限にする「債務整理」の選択肢
奨学金以外の借金があり、奨学金返済を困難にしているケースでは、債務整理の対象を分けるのが一般的です。
3-1. 奨学金「以外」を任意整理する
• 戦略: 奨学金以外の借金(クレジットカード、カードローンなど)だけを任意整理の対象とします。
• 効果: 高金利の借金の将来利息や延滞金をカットし、その分奨学金返済に回せる資金を確保します。
• 保証人への影響: 奨学金自体は整理しないため、保証人に迷惑をかけることなく、奨学金の返済を続けられます。
3-2. 奨学金も整理対象に含める場合(自己破産・個人再生)
• 自己破産: 奨学金を含むすべての借金が免除されます。
ただし、保証人には全額請求がいくため、保証人も一緒に債務整理を検討する必要が出てきます。
• 個人再生: 借金を原則5分の1程度に減額し、残りを分割返済します。
ただし、奨学金に保証人がいる場合、保証人への影響を避けるのは困難です。
まとめ:専門家に相談し、保証人を守る最適な計画を
奨学金返済の問題は、保証人(特にご両親など)を巻き込む可能性があるため、一人で判断するのは非常に危険です。
まずは奨学金独自の救済制度を利用できるか確認し、それでも返済が立ち行かない場合は、「奨学金以外の借金」を整理することが現実的な解決策となります。
あなたの状況で保証人への影響を最小限にし、生活を立て直す最適な方法を、債務整理の専門家と一緒に見つけましょう。
監修者:司法書士 並木康剛
司法書士なみき法務事務所 代表
奨学金は教育支援を目的とした制度であり、一般的な消費者ローンとは異なる法的性質を持ちます。そのため、「任意整理で楽になるかもしれない」と安易に判断すると、保証人や連帯保証人に一括請求が及ぶリスクがあります。
奨学金の任意整理を検討する際は、まずJASSOの救済制度(返還期限猶予・減額返還)の利用を優先してください。それでも返済が難しい場合には、奨学金以外の借金を任意整理して返済負担を減らすなど、保証人に影響を与えない形での再建を検討すべきです。
奨学金の返済問題は、単に借金の整理にとどまらず、家族の信頼関係にも直結します。早期の専門家相談こそが、保証人を守りながら生活を立て直す最善の手段です。